hibitの技術系メモ

数学とか3Dとか翻訳とか

3Dプリンタで幾何学的物体とこうめちゃんを生み出した

 生み出されたもの。

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 幾何学物体。

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 こうめちゃん*1

 縁あって、3Dプリンタで遊ぶ機械が与えられたので、感想とか注意点とか。想定読者としては、3Dプリンタに興味があるけど使ったことないぐらいのレベルです。フィラメント式と光造形式の2つを触ったので、その比較など。

幾何学的物体

 立方体を、対角線を軸に回転させたもの。1辺の長さを1とした場合、この体積が\frac{1}{\sqrt{3}}\piであることは東工大の入試等でも出題される等で有名です。こちらはFDM式、いわゆるフィラメント式で出力しました。プラスチックのフィラメントを熱で溶かして積層していくやつです。他の方式に比べて目が荒くなり、積層面が傾くとギザギザしてしまいますが、安価なので家庭用といえばこの方式なイメージです。今回はPrusaというプリンタを使いました。

 データはBlenderでサクッと作成。

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 キューブをScrewモディファイアで回転させるだけという力押しな方法ですが、これをstl出力するだけでなんとかいけました。

 3Dプリンタ全般の注意点として、下から徐々に積層していく関係上、下に支えがないような部分には、臨時的にサポート材という部品を同時に出力していく必要があります。ピラミッドみたいな形なら何の支えもなく出力可能ですが、ワイングラスみたいな形だと、グラスの部分を出力する際にはその下に支えが必要になります。これは臨時的なものなので後で取り除く必要がありますが、フィラメント式の場合、これが力と神経の要る作業になります。

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 この図形を出力した時は、上の図でいう黄色い部分にサポート材が必要になりました。このサポート材も同じフィラメントから出力されていて、後でベリベリ剥がす必要があるのですが、本来出力したい部分も一緒に剥がしてしまいそうで怖いです。このような単純な図形だったら指でなんとかなりましたが、もう少し複雑な部品になると、ピンセット等で頑張る必要がありそうです。

 出力時間はこのサイズで一晩ぐらい。

こうめちゃん

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 みんな大好きこうめちゃんです。

 こちらは精度的にフィラメント式だと不可能っぽいので、より細かい精度を実現できる光造形式を試してみました。こちらはUVレジンという、紫外線を当てると固まる樹脂を利用して整形します。

 こちらも下から順に積層していくもので、サポート材が必要というのはフィラメント式と同じなのですが、こちらはサポート材が蝋のような物質で出来ています。そのため、縦横無尽にサポートできる上に熱で溶かせるので、極めて失敗しづらいです。反面、プリンタ本体はもちろん材料費もフィラメント式に比べてかなり高いので、ご家庭の使用にはハードルが高いです。今回は、Projetというプリンタを使いました。

 3Dデータはけっこう調整する必要があります。

 まず、元データ(アバター向けデータ)だと、3Dプリンタで出力するには低解像度過ぎるので高解像度化します。と言っても、これはSubdivisonモディファイアをかけるだけで解決します。

 もうひとつ面倒な工程があります。基本的に3Dプリンタ用のデータは閉曲面のメッシュを想定しており、穴が空いていたり、板ポリゴンを使ったりといったメッシュを想定しておりません*2。しかし、アバター用に販売されている3Dデータは髪や小物といった部分に板ポリを多用していることが多いため、その部分に適宜修正を加える必要があります。Solidifyモディファイアでそのような処理ができますが、個別に部位を選択して厚みを調節する必要があるので、少し面倒です。

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 調整後の様子。

 出力は3日間ぐらいかかりました。

 また、光造形プリンタの場合、出力直後はサポート材の蝋がデロデロになっているのですが、それを更に溶かしたりまた洗浄液に浸けたりといった専門的な後処理が必要になります。ご家庭でやるには、価格の他にも、このような部分もけっこうハードルになる気がします。廃棄された枕状の大量の蝋は脂肪みたいでちょっとグロテスク……。全体の工程を通してかなりケミカルな要素が多いので、換気とかに気をつけないと、健康にも悪影響が出そうな気がします。

 アバター用の3Dモデルを(いくら調整したとはいえ)ほぼそのまま出力するということでどうなるか不安だったのですが、結果的にはかなり正確にしかも頑丈に出力されました。服や尻尾に小物としてついていたリボンは、洗浄したりしている内に取れてしまいましたが、これはさすがに出力する前にもう少し安定した造形にするべきだった案件であり、むしろ最初だけでも造形を正確に出力できたことに驚くべきでしょう。

 という訳で、3Dプリンタをやってみたという記事でした。

*1:https://booth.pm/ja/items/1791571

*2:これはフィラメント/光造形に関わらず、3Dプリンタ全般に言えることです。