hibitの技術系メモ

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フェルマーの最終定理もどき

 先日、あるフォロワーさんがこのようなツイートをしていました。

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(晒し上げる意図はないので、ID等は伏せています)

 nが自然数だったら有名なフェルマーの最終定理ですが、nが自然数じゃなかったら普通に成り立ちそうですね。という訳で私が考えた解答が以下の通り。

 本当の問題はこれからで、ドヤ顔であげたはいいものの、上の解答には数字の間違いがあります。よくやるんだこういうミス……。元ツイートのリプ欄には補足を入れていますが、\frac{7}{6}\piではなく\frac{7}{3}\piが正です。間違い正しついでに清書と解説を加えておきます。

清書

nが自然数であるとはどこにも書いていないので、n=\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\piとする。

(\log は自然対数)

この時、nは||n||\geq3を満たす。

ここで、(x,y,z)=(4,16,8)とすると、

4^{n}+16^{n}=4^{\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}+16^{\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}

=2^{2\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}+2^{4\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}

=e^{log 2\cdot2\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}+e^{log 2\cdot4\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}

 =e^{2\frac{7}{3}i\pi}+e^{4\frac{7}{3}i\pi}

 =e^{2\frac{1}{3}i\pi}+e^{4\frac{1}{3}i\pi}

 =e^{i\frac{2}{3}\pi}+e^{i\frac{4}{3}\pi}

 =(cos{\frac{2}{3}\pi}+i\cdot sin{\frac{2}{3}\pi})+(cos{\frac{4}{3}\pi}+i\cdot sin{\frac{4}{3}\pi})

 =(-\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3}}{2}i)+(-\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3}}{2}i)

 =-1

 =e^{i\frac{3}{3}\pi}

 =e^{3\frac{7}{3}i\pi}

=e^{log 2\cdot3\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}

=2^{3\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}

=8^{\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\pi}

=8^{n}

\therefore x^{n}+y^{n}=z^{n}を満たす自然数(x,y,z)は存在する。

証拠

 ホントかよ、と思う方へ。Wolframに実際に計算してもらいました。

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解説

 上の解答を見ただけで納得できる人となんのこっちゃという人との両方がいると思うので、解説を加えます。上のトリック(?)は実数を虚数乗すると三角関数になるという仕組みを利用したものです。理由なんて聞かないで。今夜はずっと側にいて。もしくはマクローリン展開でぐぐって。式にすると以下になります。

e^{x+iy}=e^x(cos{y}+i\cdot sin{y})

 これを図示すると、下図のようなめかぶのバケモノみたいな曲面2種類(実部と虚部)、になりますが、x=0の断面でスパッと切るとおなじみの三角関数になります。

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 しかも、この三角関数どのような実数をかけても振幅が同じであるという特性があります。振幅が変わらない代わりに周期が変わります。

 実数の虚数乗は実部と虚部とで単位円の座標になるので、単位円同士でa+b=cが成り立つような組み合わせを見つければ上記のフェルマーもどきを満たす等式は見つかるという訳です。そのようなものには、例えば\frac{2}{3}\pi,\frac{4}{3}\pi,\frac{3}{3}\pi(=\pi)があるので、それに対応した実数とnを用意すれば出来上がりです。

 ただ、\frac{1}{\log 2}\frac{1}{3}i\piだと||n||\geq3を満たさないので、三角関数の周期は2\piを足しても変わらない、という性質を利用して\frac{1}{\log 2}\frac{1}{3}i\pi+i2\pi=\frac{1}{\log 2}\frac{7}{3}i\piにしています。こうして見るとえらい強引だ……!

 ちなみに、上の計算に「オイラーの等式」として有名な下の式が出てきますが、

e^{i\pi}=-1

 要するに、\pi(=180°)回したら、単位円上の(-1,0)の位置になるよ、という幾何学的にはごく単純なことを述べているに過ぎないことがわかります。

冷静なつっこみ

 その後、あーあーあ~さんから冷静なつっこみが入る。

 ……。

 確かに、4^{3}+4^{3}>5^{3}であり、また 4^{4}+4^{4}<5^{4}なので、3 <n< 4のどこかで必ず4^{n}+4^{n}=5^{n}であるようなnは存在することになります。なお、これは容易に解けてn=\frac{log 2}{log 5-log 4} \fallingdotseq 3.11となります。

 ええーい、誰だ誰だ複素数なら成り立つ(ドヤ とか言ってたやつは。

 無駄に話を複雑にする男ってどこにでもいるよね~、という話でした。

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